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2003年1月4日、多々羅大橋は、冬晴れの瀬戸内海に美しくその姿を浮かび上がらせていた。この日、広島県尾道市と愛媛県今治市を
結ぶしまなみ海道の一部であるこの橋は、平均気温3.9度、最高気温7.3度、最低気温0.9度という冷え込んだ気候のもと、
平均風速3.3メートル毎秒の西風が吹く中、晴天に恵まれた穏やかな一日であった。冬の澄んだ空気と低い太陽の光に照らされて、
多々羅大橋の逆Y型の塔は凛とした輪郭を際立たせ、橋梁全体が洗練された造形美を際立たせていた。
この橋は、全長1,480メートル、中央支間長890メートルという規模を誇る斜張橋で、完成当時である1999年には、世界最長の斜張橋として
注目を集めた。形式は3径間連続複合箱桁斜張橋であり、主塔の高さは220メートルにも達している。1998年には全建賞道路部門、
そして土木学会田中賞作品部門を受賞し、その技術的完成度と美的完成度の両面が高く評価された。
この橋が計画された当初は、吊橋形式が採用される予定であった。多々羅海峡の幅が約900メートルあることから、当時の技術的知見では
吊橋が有利とされていたのである。しかし、建設地が瀬戸内海国立公園内であることから、アンカレイジ設置のための山地の大規模掘削が
自然景観の破壊につながるという懸念が生じた。結果として、アンカレイジが不要で、環境への影響も小さく、経済的な利点もある
斜張橋形式が採用された。
さらに、構造上の工夫として、主径間は軽量な鋼製箱桁、側径間は重量のあるコンクリート製箱桁とすることで、橋全体のバランスを
取る複合斜張橋構造が採用されている。この手法は、同様の地形条件を持つ生口橋でも用いられており、当時の土木技術の粋が集められた
結果である。
主塔が逆Y字型であることも多々羅大橋の特徴のひとつであり、これにより歩道部分では「鳴き龍」と呼ばれる多重反響現象が発生する。
これは、音が塔の内部で共鳴しながら上方へと昇っていくように聞こえる現象であり、日光東照宮の「鳴き龍」と同様の現象として
知られている。橋の歩道には、体験者が実際に音を鳴らすための撥が設置されており、訪問者にとって印象深い体験の一つとなっている。
また、この橋は瀬戸内海の美しい景観と調和しており、多々羅しまなみ公園や瀬戸田パーキングエリア、さらには大三島の立石展望台や
伯方島の開山展望台など、さまざまなビューポイントからその雄姿を望むことができる。しまなみ海道自体が自転車歩行者道を備えており、
多々羅大橋も自転車で渡ることができることから、サイクリングルートとしても高い人気を誇る。
1999年の供用開始以来、多々羅大橋は交通の要衝であるとともに、優れた構造美と環境への配慮が融合したモデルケースとして、国内外から
高い評価を得ている。特に中央支間長890メートルという記録は、完成時点では世界一であり、現在でも世界第5位という大規模なものである。
フランスのノルマンディー橋とは姉妹橋の縁を結んでおり、国際的にも象徴的な存在である。
こうした技術的・環境的・景観的な配慮のすべてが融合した結果として、多々羅大橋は単なる交通インフラにとどまらず、瀬戸内の風景に
深く根ざした存在として、今日に至るまで多くの人々に親しまれている。2003年1月4日という穏やかな冬の日にも、この橋は静かにその
役割を果たし、訪れる者に感動を与えていた。
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