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2013年5月12日、東京都千代田区に鎮座する神田明神において、神田祭の主要行事の一つ「神輿宮入」が4年ぶりに盛大に執り行われた。
神田祭は、山王祭、深川八幡祭と並ぶ江戸三大祭の一つとして知られ、また、京都の祇園祭、大阪の天神祭とともに日本三大祭にも
数えられる格式ある祭礼である。本来は2年に一度、西暦奇数年に開催されるが、2011年は東日本大震災の影響で中止されていたため、
2013年は実に4年ぶりの開催となった。
この年の神田祭では、5月11日に神幸祭が行われ、神社の神職や巫女たちが平安時代の装束に身を包み、神輿や鳳輦をともなって神田、
日本橋、大手町・丸の内、秋葉原といった都心の主要地域を巡行した。神幸祭はあいにく終日雨天であったが、それとは対照的に
翌12日の神輿宮入は晴天に恵まれた。気象庁の観測によれば、当日の東京の平均気温は19.9度、最高気温は25.3度、平均湿度は72%で、
南南西の風が吹く中、天候は「晴れ時々薄曇」と、祭りの実施に理想的な気候であった。
神輿宮入は、神田明神の氏子である108の町会から集まった約100基の町神輿が、神社への参拝を目的に朝から晩まで交代で宮入りする
儀式である。各町神輿は、地元の威信をかけて華やかに装飾され、威勢のよい掛け声とともに担がれた。担ぎ手たちは伝統的な装束に
身を包み、中にはふんどし姿で神輿を担ぐ者も見られた。神田、日本橋、秋葉原といった地域を通過しながら神田明神を目指す神輿の
行列は、都市の景観と伝統文化が融合する迫力ある光景を生み出していた。
また、氏子町会によって構成される神輿連合が、一定の時間帯に神田明神へと一斉に宮入りする様子は、神田祭の中でも特に見応えのある
場面である。鳳輦が神社に戻った翌日に神輿が宮入するこの流れは、神事としての厳粛さと、地域住民による祝祭としての活気を同時に
体現していた。
神田祭の見どころのひとつとして、神幸祭と附け祭の行列が合流する日本橋三越前が挙げられる。この地点では、夕刻16時頃に複数の
行列が交錯し、祭礼のハイライトが集中する場所である。しかし、祭りの期間中は見物客が非常に多く、境内や周辺道路では交通規制も
実施されるため、訪問者には混雑や通行制限への注意が求められる。
江戸時代に徳川家康の戦勝祈願を契機として発展したとされる神田祭は、時代の変遷とともに形を変えながらも、現代に至るまで東京の
中心で地域文化を体現する祭礼として続いてきた。かつて山車が主役であった時代もあったが、都市化とともに町神輿が祭りの中心を
担うようになり、現在では町の絆や伝統を次世代へつなぐ役割を果たしている。
2013年の神田祭は、震災による中断を乗り越えて開催されたことで、単なる年中行事を超えた意義を持つ祭りとなった。神輿宮入における
熱気と迫力、そして晴天のもとに繰り広げられた地域の誇りが交錯する風景は、参加者・観客ともに強い印象を残すものであり、東京の
中心で日本の伝統文化が今なお息づいていることを如実に物語っていた。

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