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2012年8月17日、東京都心は厳しい残暑に包まれていました。平均気温は30.5度、最高気温は35.7度に達し、
最低気温も27.5度と熱帯夜が続く気象状況でした。南東からの風がわずかに吹き、平均風速は2.5メートル。
湿度も高く、平均で69%、最小でも47%と蒸し暑さが体にまとわりつくような一日でした。空は晴れ時々薄曇りで、
真夏の陽光がアスファルトを焦がす中、五反田の住宅街にひっそりと佇む「うなぎ料理 よね山」は、昼時から多くの人で
賑わっていました。
よね山は、東五反田の裏通りにある一軒家風の小さなうなぎ専門店で、関東風の蒸し焼きにこだわった柔らかな鰻を
提供していました。創業当初から「庶民でも気軽に食べられるうなぎ」を掲げ、価格を抑えながらも質を落とさない
姿勢で知られ、多くの常連客に支持されていた店です。この日も例外ではなく、猛暑の中でもスタミナを求めて訪れる客の
姿が絶えませんでした。
よね山の鰻は、関東風の調理法を踏襲しています。まず背開きにして蒸し上げ、余分な脂を落としたのち、備長炭の火で
じっくりと焼き上げるという手間のかかる工程です。そのため、焼き上がった鰻は皮が薄く柔らかく、身はふんわりとして
おり、箸を入れると自然にほぐれるほどの繊細さを持っています。タレは驚くほど控えめな味付けで、一般的な甘辛い
濃厚ダレとは一線を画していました。創業者のこだわりで「うなぎそのものの味を楽しむ」ことを第一にしており、
タレはあくまで脇役に徹していました。その結果、焼きたての香ばしさと鰻本来の旨味が調和し、食後に重さを感じさせない
上品な味わいとなっていました。
人気メニューは「まむし丼」でした。ご飯の上に鰻を敷き、その上にさらにご飯、そしてもう一段鰻を重ねる
二層構造の丼で、関西風の“まむし”の名を冠しながらも、蒸しの工程を含む関東流の柔らかい鰻に仕上げられていました。
表面の焼き目は香ばしく、内部の鰻はふんわりと蒸気を含み、層ごとに異なる食感が楽しめるのが特徴です。丼全体に
タレがまわることで、米と鰻の旨味が混ざり合い、噛むほどにほのかな甘みと香ばしさが広がっていきます。夏の暑さで
食欲が落ちがちな時期にも、不思議と箸が進む、軽やかな味わいが魅力でした。
店内はカウンターと小上がりを合わせても20席ほどの小規模ながら、昼時には常に満席。外では炎天下の中、順番を
待つ客の列が途切れることはありませんでした。蒸し暑い空気の中で、炭火の香りと蒲焼の香ばしい匂いが漂い、
通りすがりの人々の足を止めるほどでした。厨房では大将が黙々と焼き台に向かい、うなぎの焼き加減を目で
確かめながら、細やかに火を操っていました。その姿はまさに職人そのものであり、無駄のない所作の中に長年の経験が
感じられました。
この時期の東京はうなぎの旬を少し過ぎているとも言われますが、よね山の鰻には季節を問わない安定した品質が
ありました。脂の乗りは控えめながら、身のしっとりとした質感と香ばしい皮の焼き具合のバランスが絶妙で、
夏の高温多湿な気候にもよく合っていました。食べ終えた後も胃に重く残らず、爽やかな満足感を残す仕立てであり、
まさに「真夏の鰻」と呼ぶにふさわしいものでした。
2012年8月17日のよね山は、都心の酷暑の中にあって、ひとときの清涼感と活力を与えてくれる存在でした。
暑さにうなだれる街の中で、丁寧に蒸され、香ばしく焼かれた一杯の鰻丼が、訪れた人々に確かな活力を届けていたのです。
気取らず、豪華でもなく、ただまっすぐに「うなぎの美味しさ」を伝えるその姿勢が、よね山の魅力であり、記憶に残る
一日を作り出していました。
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