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2003年5月25日の夕刻、上野駅を降りた一行は、明治期に開園された歴史ある舌状台地「上野台」の端に広がる上野恩賜公園へと足を
踏み入れたである。武蔵野台地の末端が生んだ緩やかな起伏に沿って整備された園内の小径には、まだ初夏の爽風がそよぎ、
桜やイチョウの新緑が落ち着いた色合いを見せている。まずは国立西洋美術館の重厚な外観を眺め、レンブラントやルーベンスの名画が
並ぶ館内を静かに巡ったである。天井高く伸びるギャラリーは夕刻の柔らかな光を取り込み、細部まで丹念に描かれた油彩画のタッチが
一層鮮明に浮かび上がる。
続いて東京国立博物館の庭園へと移り、噴水前広場を抜ける頃には、周囲を取り巻く博物館群の石造建築が夕闇に映え始めたである。
静かな池を望む回廊を歩けば、不忍池の蓮の葉がかすかに揺れ、かつて徳川将軍家が愛でた自然の営みを感じさせる。公園内の桜並木
から花菖蒲園へ至る散策路は、木立の間から差し込む西日の熱を和らげ、心地よい余韻を誘ったである。
館を後にした一行は、公園の南側にある飲食街へ向かい、もんじゃ焼きとお好み焼きの専門店へ足を踏み入れた。座敷風の小上がりに
腰掛けると、鉄板の上でこてを駆使して生地を伸ばし、香ばしいソースの香りが立ち込める。具材の刻みイカやキャベツ、天かすを
混ぜ合わせる手元を眺めながら、店主が注ぐ冷えたビールを一口含めば、宴の始まりを告げる乾杯の音が響いたである。もんじゃの
表面に程よく焦げ色がつく頃には、皆の箸が自然と舞い踊り、コテで掬うたびにジュワリと広がる旨みとともに笑顔が交錯した。
お好み焼きは、もんじゃとは対照的に厚みのある生地に青のりと紅しょうがをあしらい、外側がカリっと焼き上がる瞬間を見計らって
ひと切れずつ口に運ぶ贅沢が味わえたである。ソースの甘辛さにマヨネーズを絡めると、昭和の下町情緒と平成初期の気風が絶妙に
混ざり合い、上野という街の奥行きを五感で実感させる。こうして、初夏の公園散策から美術館鑑賞、そして伝統の鉄板料理へと、
今宵は、上野の魅力を余すところなく堪能する至福のひとときとなったのである。
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