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2003年の朝、ゆりかもめに乗ってテレコムセンター駅から新橋駅へ向かう旅は、東京臨海副都心が大きく
発展しつつあった時代の風景を満喫できる特別な体験です。運転士のいない自動運転車両の先頭席に座れば、
まるで未来都市を進むかのような眺めが広がり、東京湾岸ならではの景観を存分に楽しむことができます。
旅の出発点となるテレコムセンター駅は、青海地区の高架上に設けられた駅です。2003年当時、この周辺は
現在ほど高層マンションや商業施設が多くなく、広々とした埠頭や物流施設が目立つエリアでした。朝の柔らかな
日差しを受けながら列車が動き出すと、東京湾の爽やかな海風を感じさせる景色が車窓いっぱいに広がります。
駅を発車して間もなく、左手には船の科学館の白い船を模した特徴的な建物が見えてきます。1974年に開館した
この施設は、日本の海事文化を紹介する博物館として知られ、多くの来館者を集めていました。巨大な船のような
外観は遠くからでもよく目立ち、東京湾岸のランドマークのひとつでした。
その船の科学館の前には、青函連絡船として活躍した羊蹄丸が係留されていました。2003年当時はまだ保存展示が
続いており、実際の連絡船を間近に見ることができました。かつて青森と函館を結び、多くの旅人や貨物を運んだ
歴史を持つ大型船であり、その堂々とした姿は鉄道ファンや船舶ファンの人気を集めていました。朝日に照らされた
船体は美しく輝き、車窓からでも存在感を放っていました。
さらに視線を移すと、日本の南極観測史を語るうえで欠かせない保存船「宗谷」の姿も見えてきます。宗谷は
南極観測船として活躍したことで広く知られ、タロとジロの物語とも深く結び付いています。2003年当時も
一般公開が行われており、長い歴史を刻んだ船体は独特の風格を漂わせていました。羊蹄丸と宗谷が並ぶ光景は、
東京湾岸でも特に印象的な景観のひとつでした。
やがて列車は台場方面へ向かい、お台場の街並みが近づいてきます。当時のお台場はすでに人気観光地となってい
ましたが、現在ほど超高層ビルが密集しておらず、空の広さが印象的でした。その中でもひときわ目立つのが
フジテレビ本社ビルです。建築家・丹下健三が設計した巨大な建築物で、特徴的な球体展望室が朝日に輝いて見えます。
未来都市を象徴するような独創的なデザインは、初めて訪れる人に強い印象を与えます。車窓から眺めるフジテレビ
本社ビルは、お台場観光のハイライトのひとつでした。
お台場海浜公園付近を過ぎると、列車は東京湾を代表する名橋であるレインボーブリッジへ向かいます。
市場前・有明方面から新橋へ向かう場合、橋に入る前にはゴルフボール飛来防止用として設置されたネットの
トンネルを通過します。当時は近くにゴルフ練習場が存在していたため、この独特な構造物が設けられていました。
車窓から見えるネットのアーチは、ほかの鉄道路線ではなかなか見られない珍しい光景でした。
いよいよレインボーブリッジへ進入すると、東京湾の壮大な景色が広がります。橋の下層部分を走行する
ゆりかもめからは、海面を行き交う船舶や遠くの高層ビル群を一望できます。朝の時間帯は空気が澄み、
都心のビル群や東京タワーまで見渡せることもあります。橋上から眺める東京湾は開放感に満ち、まさに東京観光を
代表する車窓風景です。
レインボーブリッジを渡り終えると、新橋方面へ向かう列車は巨大なループ区間へ入ります。テレコムセンター駅側から
乗車している場合は、レインボーブリッジを通過した後にループを下ることになります。この巨大な円形ループは、
高さ約30メートルの高低差を緩やかに解消するために設けられた構造です。車内にいると、景色がゆっくり
回転するように変化し、先ほどまで見えていたお台場や東京湾の景色が次々と角度を変えて現れます。
直径約270メートルにも及ぶ巨大なループは全国的にも珍しく、ゆりかもめを象徴する名所となっています。
ループを下り終える頃には、汐留の超高層ビル群が目前に迫ります。2003年はちょうど汐留シオサイトの再開発が進み、
多くの高層ビルが完成し始めた時代でした。近未来的なビル群の間を進む様子は、まるで都市の中へ吸い込まれて
いくような感覚を味わわせてくれます。
そして終点の新橋駅へ到着します。日本の鉄道発祥の地として知られる新橋は、歴史と現代が融合する街です。
高層ビルが立ち並ぶ汐留地区の先には、SL広場を中心とした昔ながらのサラリーマンの街並みが広がっています。
わずか20分余りの乗車時間の中で、東京湾の海景色、歴史的な保存船、未来都市お台場、レインボーブリッジの絶景、
そして都心の高層ビル群まで楽しめるのが、2003年当時のゆりかもめの大きな魅力でした。朝の光に包まれながら
走るこの路線は、東京臨海部の発展を体感できる、まさに空中散歩のような旅だったのです。
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