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2011年12月10日の皆既月食は、2011年に観測された2回目の皆既月食であり、日本においては部分食の始まりから
終わりまでの全過程を全国で観察できる、きわめて条件の整った天文現象でした。同年6月15日に起きた皆既月食に
続くもので、1年に2度の皆既月食が観測されるという点でも注目を集めました。今回の月食は、主に日本を含む東アジア、
東南アジア、オーストラリアなど太平洋周辺地域で皆既月食として観測され、ヨーロッパや北米では部分月食にとどまり、
南米やアフリカ西部では月の出や夜明けの関係から観測が難しい地域もありました。
月食は12月10日20時31分過ぎに半影食が始まりました。半影は太陽光が部分的に遮られる薄い影であるため、肉眼では
変化を捉えにくいものの、時間の経過とともに月の明るさがわずかに低下していきました。21時45分には月の一部が
地球の本影に入り、はっきりと欠け始める部分食となりました。冬の満月として夜空を明るく照らしていた月は、
この時点から急速に輝きを失い、影の広がりとともに印象を大きく変えていきました。
23時5分には月全体が地球の本影に完全に入り、皆既月食が始まりました。皆既食は約52分間続き、23時31分頃に
食の最大を迎えました。この最大時刻は、東日本では月の南中時刻とほぼ一致しており、月は夜空の最も高い位置に
ありました。皆既食最大時の月の高度は、北海道南部より南の地域で70度を超え、全国的に建物や地形の影響を
ほとんど受けずに観測できる理想的な条件が整っていました。23時58分に皆既食が終わると、月の縁から再び光が
戻り始め、翌11日1時18分頃に部分食が終了し、2時31分過ぎに半影食も終わって月食の全過程が完了しました。
皆既食中の月は、完全な暗闇に消えることはなく、「赤銅色」と呼ばれる鈍い赤褐色に染まって見えました。
この色の変化は、地球の大気を通過した太陽光が原因です。太陽光は地球の大気に入る際、波長の短い青色の光が
散乱され、波長の長い赤色の光が比較的通過しやすくなります。さらに、大気がレンズのような役割を果たして光を
屈折させ、本影の内部に導くため、その赤い光が月面をかすかに照らします。この結果、皆既月食中の月は独特の
赤銅色に見えるのです。色合いの濃淡は、その時の大気中のチリやエアロゾルの量によって左右され、月食ごとに
異なる表情を見せます。
今回の皆既月食では、月明かりがほぼ失われることにより、普段は満月の光に隠されている冬の星空が一斉に姿を
現しました。オリオン座やおうし座、ぎょしゃ座などの明るい星座に加え、条件の良い場所では冬の天の川も
確認でき、皆既月食ならではの夜空の変化を楽しめる状況となりました。月そのものの変化だけでなく、月食が
星空全体の見え方に与える影響を実感できる点も、この現象の重要な特徴です。
観測当日の気象条件も、月食観察に適していました。東京都では12月10日20時の時点で気温は9.5度、
湿度48パーセント、風速1.4メートル毎秒の北東の風が吹いており、冬としては比較的穏やかな寒さでした。
空は晴れており、雲に遮られることなく月食の進行を追うことができました。乾燥した冬の空気によって透明度が高く、
月の輪郭や色の変化、周囲の星々も鮮明に観測できる環境が整っていました。
このように、2011年12月10日の皆既月食は、全国で全過程を観測できたこと、月の高度が非常に高かったこと、
さらに天候にも恵まれたことから、日本における月食観測の中でも特に条件の良い事例として位置づけられます。
地球の影に月がゆっくりと飲み込まれ、赤銅色に変わり、再び満月へと戻っていく一連の過程は、太陽・地球・月の
幾何学的な関係を視覚的に理解する格好の機会となり、天文現象の規則性と壮大さを明確に示す皆既月食でした。
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