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2012年8月17日の東京都品川区は、真夏の日差しが照りつける一日でした。平均気温は30.5度、最高気温は35.7度に達し、 最低気温も27.5度と高く、夜間も熱がこもるような蒸し暑さが続きました。湿度は平均で69%、最小でも47%と高く、 南東の風がわずかに流れていたものの、体感的にはほとんど無風に近い日でした。空は晴れて時折薄曇りとなり、 強烈な太陽光がアスファルトに反射して街全体を白く照らし出していました。 この日の散歩の出発点は、品川区北部の東五反田です。ここは山手線・都営浅草線・東急池上線が交差する五反田駅を 中心に、商業施設やオフィスが建ち並ぶ地域です。駅を背に都道317号(ソニー通り)へ出ると、都心の喧騒が続き、 ビルの谷間を進みます。五反田駅周辺にはカフェや飲食店が多く、昼時には多くの人が行き交う活気あるエリアです。 かつてソニー本社や研究施設が立ち並んでいたソニー通り周辺は、戦後まもなく、 ソニーの創業者・井深大と盛田昭夫が御殿山の地に拠点を構え、ここは約60年にわたり「ソニー村」と呼ばれた企業文化の 中心地でした。2010年以降、ソニーの本社が港南口のソニーシティに移転したことで、通り沿いの工場群はマンションへと 姿を変えましたが、「ソニー通り」という呼称は今も地域の人々に親しまれています。盛夏のこの日、アスファルトの 照り返しと蝉の声が響く中を歩くと、かつてこの道を埋め尽くした社員たちの姿を想像させるほどの熱気が感じられました。 さらに南下すると、地形がゆるやかに高まり、城南五山のひとつ「御殿山」が見えてきます。御殿山は高輪台地の南端に 位置する高台で、かつて太田道灌が居を構えたと伝わる由緒ある地です。江戸時代には桜の名所として知られ、多くの 文人墨客がこの地を訪れました。現在は再開発が進み、オフィスビルや高級住宅が並ぶ閑静な一角となっています。 緑の木陰が心地よいものの、真夏の陽射しの下ではその涼しさも一瞬の逃げ場にすぎませんでした。 御殿山を抜け、八ツ山橋を渡ると、そこから旧東海道の入口にあたる北品川に至ります。この道は江戸時代に整備された 東海道五十三次の第一の宿場「品川宿」があった場所で、今も道幅約7メートルの街道が蛇行しながら続いています。 かつては江戸の玄関口として人や物が行き交い、宿場町として栄えた地域であり、現在も古い町家風の建物や寺社が 点在しています。旧東海道沿いを歩くと、往時の雰囲気を残す街並みと、背後に高層ビルがそびえる現代的な対比が 印象的です。 さらに南へ進むと、立会川に到達します。この川は目黒区から品川区を経て東京湾へと注ぐ全長7.4キロメートルの 二級河川です。名前の由来には諸説あり、戦いの場としての「太刀会川」説、罪人を見送る地「立会川」説、あるいは 中延の「滝間川」が転じたという説などが伝えられています。川沿いには江戸時代からの由緒ある天祖・諏訪神社があり、 その創建は平安末期から鎌倉初期とされ、千年近い歴史を有します。 また、立会川駅近くの北浜川児童遊園には、坂本龍馬のブロンズ像が立っています。これは龍馬が嘉永6年(1853年)に 品川藩邸警衛を務めたことを記念して建立されたもので、草履を履いた姿は全国的にも珍しいとされています。夏の日差 しの中、蝉の声が響く風景の中で、この像が静かに立つ姿は、近代日本の幕開けを象徴するかのようです。 こうして東五反田からソニー通り、旧東海道を経て立会川に至る約4キロメートルの道のりは、現代と歴史、産業と文化が 交差する品川の縮図ともいえる散歩道です。真夏の暑さに包まれた2012年8月17日、この地を歩けば、過去と現在が 融合した東京のもう一つの顔を感じることができるのです。


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