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2025年4月28日、神奈川県の三浦半島沖に位置する無人島・猿島へ向かう船上から、南極観測船「しらせ」が入港する様子が 目撃された。この日、三浦半島の気象状況は平均気温17.2度、最高気温21.9度、平均湿度77%、平均風速4.2メートル毎秒、 風向は南南西で、空は曇りがちであった。このような春の穏やかな気候の中、全長138メートル、幅28メートルの巨体を もって静かに進入する「しらせ」の姿は、ひときわ目を引くものであった。 「しらせ」は、文部科学省の国立極地研究所が主導する南極地域観測隊のために建造された南極観測船である。艦番号は AGB-5003で、2009年に就役した。運用は海上自衛隊が担っており、観測・輸送のための機能を両立する特殊な艦である。 防衛省では「砕氷艦」と呼称しているが、文部科学省および報道機関では「南極観測船」として広く知られている。 本艦は初代「しらせ」(AGB-5002)の後継艦であり、排水量は12,650トンと、初代よりやや大型化されている。これにより 物資の輸送能力は従来の約1,000トンから1,100トンへと増加し、搭乗人員も最大で約260名(乗員180名、観測隊員等80名)に 拡大されている。南極観測という特殊任務に対応するため、艦内には医師や歯科医が常駐し、理容室などの生活設備も備わっている。 「しらせ」は強固な氷を砕きながら進むため、艦首には曲面構造を持つ砕氷設計が施され、さらに砕氷補助装置として 船首散水装置も搭載されている。氷厚約1.5メートルの海氷を、時速約5キロメートル(3ノット)の速度で連続して砕氷する ことが可能である。より厚い氷に対しては「ラミング砕氷」と呼ばれる方式を採り、艦を後退させた上で前進・乗り上げて 自重で氷を破砕する。 推進方式には、三井造船製の16V42M-A型ディーゼルエンジンによる統合電気推進が採用されており、これは先代の ディーゼル・エレクトリック方式に比べて効率が高く、低速域での高トルク発揮も可能とする。プロペラは 直径5,200ミリメートルの大径型で、2軸構成となっている。これにより氷塊の噛み込みを回避しつつ安定した砕氷航行を 実現している。 艦体は耐摩耗性に優れたステンレスクラッド鋼で構成されており、南極海域の過酷な環境にも耐える。さらに、喫水付近の 塗装剥離による海洋汚染を防止する設計や、二重船殻構造による燃料漏出の防止策も施されている。南極域での環境保全の 観点から、艦内には高度な廃棄物処理設備が導入され、復路では昭和基地で発生した廃棄物を回収して持ち帰る。 観測機器としては、海底地形図作成のためのマルチビーム音響測深装置や、流向流速計、各種コンテナ化された研究室などが 備えられている。また、航空装備としては海上自衛隊所属の大型輸送ヘリコプターCH-101を2機搭載し、必要に応じて 民間チャーターの小型ヘリも搭載可能である。これにより、物資輸送および人員移動の柔軟性が高められている。 「しらせ」は例年11月中旬に東京・晴海埠頭から出港し、オーストラリア・フリーマントルにて観測隊を乗艦させた後、 南極・昭和基地へと向かう。その後、2月頃に基地を離れ、4月に日本へ帰国する。帰港後は横浜のJMU鶴見工場で点検・整備が 行われ、夏には各地で広報活動を実施、10月には再び晴海埠頭にて物資の搭載準備を行い、次回の南極行きに備えるという 運用サイクルが確立されている。なお、本艦の母港は神奈川県の横須賀基地である。 2025年4月28日の入港は、こうした定期運用サイクルにおける帰還直後の整備前段階にあたるものと推測される。 曇天の下、南南西の風を受けながら穏やかに航行する「しらせ」の姿は、南極という極地での任務の重さと、日本の科学技術の 粋を結集した船体の存在感を静かに物語っていた。


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しらせ(南極観測船)





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